【Vol.198】 スポーツもビジネスも、組織マネジメントは同じ!
先日、帝京大学ラグビー部監督の岩出雅之さんの
お話を聞く機会がありました。
全国大学選手権において、2009年度から
前人未到の9連覇に導いた名将です。
勝ちたいと思っていたときは勝てなかった。
勝たせたいと思っていたときは、少しだけ勝てた。
学生4年間とその後の未来を、
楽しくさせながら幸せにしたい。
それ以降は連覇しているそうです。
自ら学び、成長する人材になってほしい。
自分で掴んでいく力を育みたい。
楽しくする活動から充実感を生んでいき、
学生の「今」と「未来」に好機を導く。
未来に向けて成長してほしい、
選手の未来まで幸せにしてあげたい。
自ら成長する力をつけ、自律型組織へ。
そのような想いで選手の育成に取り組んでおり、
勝ち続ける組織を作るために、
リーダーシップをどう作っていくか?
そのために何が必要か?
そう問いかけ続け、
「若者のやる気の引き出し方がキーとなる」と、
そういう結論に至り、
選手たちのポテンシャルを壊さないために、
充実感と楽しさが必要で、スローガンは、
Enjoyとチームワークに決めたそうです。
なぜ楽しさとチームワークを追求するのか?
「体育会系の組織は、今でも指示待ちが多い。
指示命令というのは、リーダーが楽する文化で、
大学の体育会は、トップダウン型。
つまり、4年生は神様であり、
1-3年生は雑務をこなさないといけない。
変動、不確実、複雑、曖昧で、予想困難な時代になり、
今までの常識を変える、脱体育会が必要。
言葉少なく、俺の背中を見て、付いて来いという
そういう時代ではない。
後輩は見ていないし、付いて来ない。
組織の体質改善が必要だった。
今、変わっておかないと、おいていかれる。
主役はもはや、監督やコーチ、ドクターではない。
選手、学生である。
トップダウンからボトムアップ型へシフトし、
人のために汗をかける組織へ変えていかないといけない。
先輩が後輩をサポートし、後輩に余裕をつくる。
支援、伴走型組織を作っていかないといけない。
受けてきた教育や、価値観も変化しており、
教育は時代と共に変化する。
いい意味で変わっていかないといけない。
個々の判断とチームワークがより大切である。」
岩出監督は、そのように言っています。
どういう組織マネジメントがおこなわれているかと言うと、
ビジョン共有とチームワークです。
そして、自分づくりに専念できる環境を整え、
自分のことに集中させるために、1年生には余裕をもたせ、
自分で変わろうとする、自分を動かす力、
オーナーシップを身に付けていってもらうよう、
組織をマネジメントしているとのことです。
お神輿に例えると、最初はぶらさがっている1年生も、
そのうち自らかつぐようになる、そういうイメージです。
先輩である上級生が意識していること、
リーダーとしての在り方は、
・やさしく付き合い、心を掴む。
・先輩として、言いたいことを質問にして、相手に言わす。
・そのために、先輩は、シナリオ、ポイント、根拠を自分の中で
短い時間で整理をして、会話をする。
・人を動かすには、相手をよく見ること、関心をもって接すること。
・めんどくさいが、いろんなことをしっかり見る。
・サーバントリーダーシップが必要。
・心を掴んで、リーダーシップである。
教育4訓
乳児は肌を離すな。
幼児は肌を離して、手を離すな。
少年は手を放して、目を離すな。
青年は目を離して、心を離すな。
・先輩の、人としての余裕を高める。
・授かる人、奪う人から、与える人へ。
・与えることができる人を育てる。
・人の心を掴むとは、Giveしていくこと。
・余裕をつくるために、先輩は後輩をサポートし、伴走する。
・後輩は先輩をリスペクトし、応援する。
・ビジョンを共有し、チームワークを大切にする。
・チームを好きにさせる、チーム愛のスタート。
・オーナーシップからリーダーシップへ。
・自分で変わろうと思わせる。
・利己から利他へ。
岩出監督は、選手の育成について次のように述べています。
「内的作り(自分の内面)、
内的コントロールによるモチベーションが大切。
アメとムチは外的コントロールであり、
アメもムチは、どっちもマイナス。
やらされる感があり、想像力を落とす。
感情的、経済的圧力は、アメとムチであり、
惰性と逃避マインドを生む。
昭和の世代は、アメとムチ。
これからは、プレイを楽しむ。
内発的動機から楽しむ力、充実感と楽しさを作っていく。
活動そのものの中に、喜びを見出せるように促していく。
それをいかにセットアップ、マインドセットするか。
うまくいったこと、自分でやりたいと決めたこと。
成長マインドはそこから始まる。
自律、目的、可能性をもっている期待感をうまくもたせ、
少しずつでも、自信をもってやる方向へと導いていく。
価値ではなく、期待(見通し)から、
うまくマインドセットさせる。
小さい成功体験は、自己肯定感や万能感になる。
どうせできないから、きっとできるへ。
最強のモチベーションは、楽しさである。
チェンジ、チャレンジ、チャンス。
変わり続けられるかどうか、
リーダーの資質が問われている。
リーダーも変わっていかないと、完成がない。
先輩の好感度は、人間力。重要なのは、
・関係づくり
・共感
・誠実
・笑顔
・ポジティブ
能力は力量、結果。
能力 + 人格 = 信頼度
信頼度、誠実さがあって、意図を伝えられる。
アナログではあるが、原点は人間力。
そして、想定外をどうするか?
想定外については、普段話あっている。
でも起きたら、楽しむ。
監督の意図、伝達事項については、
先輩はコピーし、自分の考えをもって、
理解を確認するために、1年生に聞く。
それを年間通して、ずっとやっている。
10人いたら、理解を合わせられるぐらいまでやる。
状況 ⇒ 背景 ⇒ 評価 ⇒ リコメンドという会話の流れ。
そうすることで、3-4年生もしっかりしていく。
心理状態を変化させ、楽しさから、人の心をつかむ。
ちなみに下級生は、4年生のことを好き。
私(岩出監督)は、決めたら頑固、答えが出るまでぶれない。
進捗等、確認したいことがあれば、どう?と聞く。
ビジネスにおいては、部下を育てる余裕がない。
上と下からプレッシャーがある。
組織体質はカルチャーになる。
3:4:3の4をうまくやる、少しずつあげていく。
時代の変化、先取りが大切。」
自分たちの取り組みは新しい話ではないと、
岩出監督は、そうおっしゃっていましたが、
ビジネス、民間企業では、
こういう取り組みができていないのが実情で、
そういう意味において、とても新鮮で、
ビジネス界のリーダーは、
みんな真剣に聞いていました。
ビジネスにおける組織マネジメント。
スポーツにおける組織マネジメントと
似ていると思いませんか?
今回のお話に関係するマネジメントの基本と原則を考えると、
例えば、
・ミッション経営とビジョン共有
・経営者としての役割(全員を貢献者にすること)
・強みと貢献
・リーダーシップとチームワークetc.
そういうテーマが重なっています。
マネジメントの基本と原則、
その当たり前のことを、当たり前にやり、
ぶれずに浸透、定着させること。
そして、リーダー、トップとしての想いや
在り方が、今後ますます大きく問われるように感じます。