【Vol.174】 病院経営の改善と黒字化、そして健全経営へ

厚生労働省は毎年、救命救急の診療体制や患者の受け入れ実績について、
全国の医療機関を評価しています。その評価において、
4年連続で日本一と評価された医療機関が、
神戸市立医療センター中央市民病院です。

市民の生命と健康を守ることを使命とし、
「断らない救急医療」を実践している市民病院です。
軽症の1次、入院が必要な2次、緊急手術や集中治療が必要な3次。
救急患者は選別せず、365日、24時間、
タクシーなどでの直接受診を含め、
あらゆる患者を、いつでも受け入れています。

この神戸市立医療センター中央市民病院が、
どのような診療体制をとっているのかというと、
救命救急センターには、23人の救急医や救急科専攻医の
専従医師がいて、各診療科の専門医も24時間常駐しており、
センターの救急医や研修医らが救急患者を診療し、
必要があれば各専門医に相談したり、診てもらったり
することができます。病院の当直の医師は全員、
救急にも対応し、ほかに、薬剤師や診療放射線技師ら
10人以上が当直しているそうです。

患者さんを断るか、断らないかではなく、
どうすれば受け入れられるかを考えて、
救急医療体制のマイナーチェンジを繰り返してきた。
常に修正して整える。気付いたら2年連続で1位。
3年目からは満点になった。」

司令塔を務め、救命救急センター長である
有吉孝一医師は、そのように言っています。

例えば、どんな修正、改善を図ってきたかというと、

2016年には精神科身体合併症病棟(8床)を設け、
専従の精神科医も配置し、精神疾患があり、
自殺を図るなどした患者さんを、無理に早期退院させる
必要がなくなり、医師や看護師を徐々に増やし、
ベッドの増床にも努めてきたそうです。

また、地域医療推進課救急サテライトをつくり、
患者さんの入院待機中から、転送・転院先を探す努力をしていて、
地元の開業医や中核病院へとつなぎ、本院だけでなく、
地域全体で医療が完結するよう心掛けているとのことです。

救急車やドクターカー、ドクターヘリなどの搬送だけでなく、
自家用車やタクシーで病院にやってきた直接受診の患者も
受け入れています。

「救急車やドクターヘリだけでは救うことができない
重症の患者がいる。社会のセーフティーネットとなるためにも、
すべての患者を受け入れないと。救急医、中でもER医を育てて
地域や全国に送り出したい。ER医は患者さんに育てられる。
今も活躍しているし、いつでも誰でも受け入れる中で確実に育っている。
救急に理解のある各科の専門医や看護師を含め、
広く人材を育てていきたい。『専門医がいない』という理由で、
救急患者を断る病院がある。患者さんのためにも、
救急医療ではER医の診療が当たり前になればいいと考えている。」

有吉センター長は、そのようなビジョンを描きながら、
なされるべきことを進め、日々、改善に向けて取り組んでいます。

ER医とは、1次から3次まで、患者さんを選別せずに受け入れ、
診療する救急外来を『ER型』と呼ぶそうです。
ER医は全科の初期治療を担い、緊急度を判断して経過観察するか、
入院させるかを決め、軽症者の中から重症者を見つけ出す。
そうした能力を身に付けた救急総合医がER医だそうです。

病院経営においても、うまくいっている組織、
そうでない組織があり、二極化していると言われています。
経営トップは理事長が勤めるケースもあれば、
病院長であったり、事務局長であったり、
組織によってさまざまではあるかもしれませんが、
トップが経営チームを構成し、

・誰のために病院経営を行っているのか?
・何のために、どんな想いで、日々の運営を行っているのか?
・社会の問題について、強みや卓越性を活かし、どのように貢献していくのか?

経済的成果を出しながら、「われわれの使命は何か?」という
ミッション経営をおこない、使命を果たしていく取り組みは、
私たち、一般の企業の取り組みと、まったく同じです。
マネジメントの基本と原則を学び、自分たちの組織に
適用させていかないといけません。

なぜ、ドラッカーのマネジメントの基本と原則
病院経営に適用させることができるのか?

それは、ドラッカー氏が経営コンサルをされていたときに、
病院経営にも携わっており、その経験を踏まえたうえでの
マネジメントの基本と原則でもあり、その基本と原則は
今も普遍的で、病院組織にも適用できるからです。

神戸市立医療センター中央市民病院のように、
使命、顧客(患者)、価値において、
一貫性がある状態にしていくために、
日々、小さな改善を積み上げていく。
そういう経営トップの意識改革と、
組織改革の取り組みが、欠かせません。

経営者は経営しなければならない。
経営者のマネジメント力向上が重要課題である。

ピーター.F.ドラッカーは、そのように言っています。

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